日本語のタネ
外国人材の社会参加と定着を、日本語教育から支える。
外国人材の受入れと日本語教育
―定着・活躍・社会参加を支える言語政策を考える―
日本では、外国人材の受入れが急速に進んでいます。
少子高齢化が進むなか、医療、介護、製造業、建設業、宿泊業など、多くの分野で外国人材はすでに欠かせない存在となりました。この流れは一時的なものではなく、今後も続いていくと考えられます。
しかし、その一方で、私は日本語教育に携わる立場から、大きな違和感を抱いています。
外国人材を受け入れる制度は整備されつつある一方で、日本で働き、暮らし、地域社会の一員として生活するために必要な日本語教育は、十分に制度化されているとは言えません。
多くの場合、日本語学習は本人の努力に委ねられています。
仕事をしながら学ぶ時間を確保することは容易ではありません。学習機会や指導者へのアクセスも地域によって大きく異なります。それにもかかわらず、職場や地域で生じた問題は、「日本語ができない」「文化が違う」という言葉で片づけられてしまうことがあります。
本当にそれでよいのでしょうか。
JLPTだけでは測れない力がある
私は長年、日本語教育に携わってきました。
日本語能力試験(JLPT)は、日本語能力を客観的に示す重要な指標です。しかし、試験に合格することと、日本社会で働き、生活し、人と信頼関係を築くことは同じではありません。
職場では、
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相手の意図を正確に理解すること
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分からないことを質問すること
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報告・相談・説明を適切に行うこと
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状況に応じて言葉を使い分けること
が日常的に求められます。
こうした力は、試験対策だけでは十分に身につきません。
日本語教育は、社会を支える基盤である
私は、日本語教育は外国人だけのためにあるものではないと考えています。
外国人材が安心して働き、能力を発揮し、日本社会に定着することは、受け入れる企業や病院、地域社会、そして日本全体にとって大きな利益になります。
日本語教育は、人手不足対策でも、福利厚生でもありません。
社会参加を支え、職場の安全を守り、人材の定着を促し、多様な人々が共に働く社会を実現するための基盤です。
このシリーズで考えたいこと
このシリーズでは、日本語教育の専門家という立場から、外国人材の受入れと言語教育の関係について考えていきます。
扱うテーマは、次のようなものです。
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入国時の日本語要件と、実際に必要な日本語能力
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JLPTと実践的な日本語力の違い
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生活・就労・社会参加に必要な日本語とは何か
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職場におけるコミュニケーションと暗黙知
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日本語教育を本人任せにしないための仕組み
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定着につながる教育投資
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専門職に必要な日本語教育
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海外の言語政策から日本が学ぶべきこと
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日本に求められる言語政策
このシリーズは、外国人政策全般を論じるものではありません。
また、外国人だけに努力を求めるものでもありません。
日本語教育の専門家として、外国人材が日本で能力を発揮し、日本社会の一員として安心して暮らし、働くためには、どのような言語教育が必要なのかを考えたいと思います。
そして、そのことが、日本という国が将来にわたって世界から選ばれる社会であり続けるために、どのような意味を持つのかについても、皆さんと一緒に考えていきたいと思います。
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【執筆者】
糸川 優
日本語のタネ 代表
登録日本語教員
筑波大学・明治大学・聖路加国際大学 非常勤講師
35年以上にわたり、日本の大学等で80か国以上の留学生・外国人材の日本語教育に携わっています。日本語の習得を試験合格だけで終わらせず、学業、就労、専門職としての成長、そして日本社会への参加につなげる教育を実践しています。
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